SEOとソーシャルメディアマーケティング、コンテンツマーケティングを統合して考えるべき理由

前回のポストでは、10年間の技術と消費者行動の変容を追いかけ、今後のマーケティング戦略を考える上で、重要なファクターを抽出しましたが、その中で、Googleの動向は触れていませんでした。今回は、ソーシャルメディアが台頭した中でのGoogleの動向に目を向けます。特にソーシャルメディアの巨人であるFacebookと検索の巨人であるGoogleの話はインターネットの覇権争いに目が向けられますが、ここではあくまでも事業者サイドからの視座と視点とし、とるべき方向性を考えてみたいと思います。

ソーシャルメディアの台頭と検索エンジン結果の質

Googleの検索は、言うまでもなく、ユーザが入力した検索クエリに対して最も価値の高いと思われる情報を結果表示します。こうした評価は、そのウェブページのページランク、そして外部からのリンク構造など、様々な変数によって決定されていました。しかし、こうしたアルゴリズムの特徴を調べ、意図的にサイトを検索結果の上位に表示しようとする行為(外部SEO対策)が2005年を過ぎたあたりから増加しました。それまで検索エンジンの表示順位を上げようとする施策は、実は意外と簡単なもので、ドメイン年齢やページランクが高いサイトと相互リンクを張る、または外部サイトからのリンクを購入し、大量にリンクされている状態を意図的に作り出すなどです。

こうした過度な検索エンジン対策は、検索エンジンの結果がゆがめられ、ユーザから疑問の声があがります。自分が調べたい事柄に対して、有益な情報が掲載されているはずの検索結果が、SEOされたサイトが並んだのです。もちろん、本当に有益な情報を掲載していればユーザも便益を得たはずです。

ソーシャルメディア上で共有される情報は受動的(能動的な行動から得られない偶然性も担保されている。)であり、調査のような能動的な検索エンジンからの情報取得は、そもそも異なりますが、友人関係(ソーシャルグラフ)からの確度の高い情報に対し、上述した結果の質は、Googleの立ち位置を守るためにも絶対に改善すべきだったと想像できます。

検索エンジンスパムの撲滅

Googleは、こうした事態への対処策として、ブラックハットSEOと呼ばれる検索エンジンスパム行為の撲滅を目的としたアップデートを開始しました。直近の2012年4月、ペンギンと呼ばれる検索エンジンアルゴリズムのアップデートを行いましたが、実際に、Googleの指摘する過度なSEO対策が実施されたと見られるサイトが、Googleの検索結果から消えました。こうしたサイトの傾向を見ると、サイトが開設されて間もないにも関わらず(ドメイン年齢が若い)、相互リンクが大量にはってある、また、大量の外部からリンクされているサイトなどは検索表示順位から外れることになったようです。

当社は検索エンジン最適化の外部施策を否定している訳ではありません。しかし、背景を整理しながら理解していくとすると、少なくともGoogleが発表しているウェブマスター向けガイドラインを逸脱した施策は絶対に避けるべきでしょう。(Googleの定義によるとウェブマスター向けガイドラインに沿ったSEOは推奨されており、ホワイトハットSEOと呼んでいます。)尚、この点は、当然、SEO業界では多くの認知はありますが、ウェブ制作プロダクション業界では、まだ認識が薄いようです。サイトオーナーは自社の取引先に対し、これらのガイドラインの注意喚起や監査を実施したほうが良いでしょう。)

「人」を介したリンクストリームの理解と検索結果のパーソナライズ

Facebook等のソーシャルメディアの台頭によって情報共有・流通構造が大きく変化しましたが、それはGoogle 検索エンジンの方向性にも大きく影響を与えたと言えます。それまでのGoogleは、世界の情報整理において「人」を介在させず、検索アルゴリズムに任せるといったスタンスをとっていました。ところが、検索行動から始まったインターネットの入り口、つまりGoogleが支配していた検索に取って代わり、ソーシャルメディアを介した情報取得へのシフトが鮮明になるにつれ、Googleも黙ってはいません。

まだ苦戦していますが、Google自体がソーシャルメディアであるGoogle Plusをローンチし、自社サービスを統合する計画を現在も強力に推進しています。+1の挙動を検索結果に反映し始めたことは、Google検索エンジンの継続的なアップデートにおいて、「人」を介したリンクストリームの理解、そして情報の質は「人」によって異なる事実への対応として検索結果のパーソナライズという方向性を決定づけたと言って良いでしょう。

ソーシャルネットワーク上での施策とSEOは融合し始めている

当社は、この方向性の理解は、とても重要だと考えています。SEO、ソーシャルメディアマーケティング、今年に入ってからはコンテンツマーケティングなどが盛んに取り上げられていますが、多くのベンダーは、自社のポジションや専門性に応じて、各ソリューションを個別に語っています。しかし、ビジネスを推進する事業者サイドからすれば、明らかにこれらは統合して考えるべきでしょう。

経営者やトップマネジメントにおいては、細かな技術動向はおいておくとしても、自社のマーケティング組織がこうした背景を理解した上で今後のマーケティング戦略を考えているか、また、計画された戦術は、新たな情報共有・流通構造を想定したものか、Googleの動向を意識してこれまでのやり方と具体的にどう違うのか?こうした問いは常に確認すべきでしょう。

マーケターにおいては、まずはウェブマスター向けガイドラインをもとにした、ウェブ制作会社、SEO業者への監査を行い、自社のオンラインマーケティング活動におけるリスクの所在を明らかにすべきです。Googleも指摘していますが、自社で把握できていない、過去に行った外部SEO施策によって、検索結果から外されるケースが増えているようです。

またサイトリニューアル等、契機があればサイト構築だけでなく、新しい情報共有・流通構造を意識したコンテンツ計画が必要になると思われます。コンバージョンのための自社サイト内のコンテンツだけでなく、自社メディアとソーシャルメディアを統合して考え、「人」に共有されるためのコンテンツ計画も実施すべきでしょう。すなわちそれはGoogleの検索エンジン対策にもなり得るからです。

ソーシャルメディアの台頭とGoogle検索エンジンの新たな方向性を背景に、事業者は全体的な動向を捉え、オンラインマーケティングの中で、これらの個別施策を統合して考えていく必要がありそうです。