今後のデジタルマーケティング戦略を構築する上で、重要なファクター

今や、TwitterやBlogといったツールは、消費者が容易に情報発信できる環境を生み出しました。また、Facebookを代表とするソーシャルメディアは、膨大な情報を適切な人々に届かせる役割を担っています。

昨今、こうしたキーワードを最近よく耳にしますが、私たちは、目の前の新しく登場した技術やキーワードについて議論する際、その背景を忘れてしまうことが多々あります。

重要なのは、ターゲット顧客がどのような特性を持って、今のソーシャルテクノロジーと接しているのか? こうした基礎情報を抑えずして技術を論じても、真の目的を見失いがちです。やってはいけないことですが、意外と、どこでもこのような話が繰り広げられており、陥りやすい罠と言えるでしょう。

FacebookやTwitterなどを自社の事業拡大に活かす前に、今日は2000年以降のインターネットの技術トレンドを消費者行動の観点で簡単に整理し、情報流通がどのように変化したのか大局を観てみます。同時に今後のマーケティング戦略の根幹となる、認識すべき重要なファクターを抽出したいと思います。

2000年初頭から中期: 個人が情報発信する手段を獲得

この点で、Blogの役割は特筆すべきものがあります。2000年頃に開始されたBloggerは、2003年にGoogleに買収され、誰でも無料で簡単に記事執筆でき、ウェブサイト上に更新できる仕組みがインターネット上に出来上がりました。

こうした技術は、包括してCGM(Consumer Generated Media)と呼ばれ、Blogだけでなく掲示板も含まれます。また、旅行や金融サービス、グルメといった特定のテーマに特化したCGMが出現することで、個人は自分が経験した製品やサービスの評価を他人と簡単に共有できるようになりました。

2000年代後期: ソーシャルメディアを中心とする情報流通基盤の出現

その後登場したTwitterやFacebook等のソーシャルメディアも同様に、簡単にコンテンツを生成し発信することができますが、Blogに対してよりコンパクトなものでお互いの近況を報告しあうようなものです。しかし、それらの情報発信が友人の関係の上に成り立っていることはCGMと最も異なる点です。また、リアルタイム性が強くなっていくことも一つの特徴と言えるでしょう。

Blog等のCGMにより個人の発信した情報は肥大化し、この友人関係(ソーシャルグラフ)を経路としてリアルタイムに共有され始めました。旧知の間柄、同じ趣味や興味を持つ関係、互いのパーソナリティをよく知っている間柄、、、現実世界の人間関係がインターネット上でも確立したことで、小さな情報でも、その人にとって価値の高い情報が友人から届く。また、それらは信頼性が高い情報として消費者の購買行動に多大な影響を及ぼすことになりました。

この10年で 明確になった情報共有・流通構造変化

簡単に見てきましたが、この10年間で最も変化したのは、消費者の購買行動でしょう。よりスマートになり、影響力が増大しました。これまでは情報発信の主体は企業で、それを媒介するのはマスメディアの役割でしたが、今やインターネット上に、個人の、個人による情報共有・流通基盤が出現し、消費者主体で情報が生成され、消費者間で共有され、消費者自らが製品やサービスを消費することが当たり前になりました。

このような環境変化から見てとれる重要なファクターとして以下があげられます。

1. 「人」が情報の価値を決める

これまでは、マスメディアが担ってきましたが、「人」が価値を判断するようになりました。流れてきた情報に対して個人が共感・共鳴すれば、共有をする。共感、共鳴しなければ情報は共有されず流通しません。よって企業側から見ますと、一方的な情報が伝わらなくなった原因でもあります。

2. 「人」が情報を媒介する

上記でも触れていますが、Twitterであれば「Retweet」、Facebookは「いいね!」こうした機能を人が利用することで、情報を媒介しています。つまり「人」そのものが、メディア化しています。

3. ソーシャルネットワーク上で構築された友人関係が情報共有・流通経路として作用

現実世界の人間関係が、ソーシャルメディア上に構築され、また、情報共有が簡単に行える機能が提供されることで膨大な情報の中で価値が見出された適切な情報が、リアルタイムで流通するようになりました。

4. 小さな話題・マーケットでも情報が適切に流通する

これまでマスメディアがカバーしてきたのは大衆を対象としたマス情報でした。ソーシャルメディア上では、こうしたマス情報に加えて、これまでのメディアでは扱うことが非効率であった、小さな話題でも情報が適切に共有・流通するようになりました。他人からすると全く意味のない情報でも、言い換えれば、共通の趣味を持ったマニアだけで流通する情報でも、価値が見いだされ友人関係を経路として適切なグループの中で情報が共有されます。

今後のマーケティング戦略を考える上で、上述した情報流通の構造変化は基礎的かつ重要な認識となってくるはずです。これらの現象は、異なるプレイヤーにより個別に展開されており、また、現在進行形でもあります。そのため、その時点によっては何が起こっているのか整理しずらく、このような変化に戸惑っている方もいるかもしれません。確かにこれまでと比べて、変化は大きく、理解しにくいかもしれませんが、実際、これまでも勝ちパターンなどありませんでした。

環境分析をして最適な戦略を構築する。本質的には、今までやってきたことと何ら変わりがありません。各種キーワードに惑わされることなく、注力すべきは環境変化をとらえ、自社の戦略を適応させることです。